2015年8月に「ブロードライン」という猫用の予防薬が新発売されたのをご存知でしょうか?
これは、「フロントライン」で有名なメリアル社が新しく開発した予防薬で、皮膚に垂らすだけで、ノミ、マダニ、フィラリア、消化管内寄生虫を一度に予防できるという画期的な薬です。
ん?でも以前からある薬で似たような効果のものがあったような。。。
そう、「レボリューション」ですね。
「レボリューション」はゾエティス社(旧ファイザー社)が開発した薬で、同じように皮膚に垂らすだけで、ノミ、フィラリア、回虫などを一度に予防できる薬です。
「レボリューション」は、自分が獣医師になり始めの頃に出始めた薬で、ノラ猫を保護した時に感染している可能性の高い、ノミ、回虫、ミミヒゼンダニを1剤で駆虫でき、さらに、それまで皮膚に垂らす薬でフィラリアを予防できる薬がなかったので、その名の通り「革命的」な薬でした。
「ブロードライン」も「レボリューション」も、
皮膚に垂らして使う薬
ノミ、フィラリア、回虫に効く
効果は1か月続く
のは一緒です。
それでは違いは何なのか?
1、有効成分の違い
「ブロードライン」は4つの薬が配合された薬になります。
フィプロニル、(S)-メトプレン、プラジクアンテル、エプリノメクチン
このうち、
フィプロニル、(S)-メトプレンは「フロントラインプラス」と同成分でノミ、マダニに対して有効、
「プラジクアンテル」は「ドロンシット錠」と同成分で条虫に対して有効、
エプリノメクチンがフィラリアに対して有効です。
これに対し「レボリューション」の有効成分は、セラメクチンのみになります。
2、駆虫できる消化管内寄生虫の種類の違い
これが「ブロードライン」にとって、最も大きいアドバンテージだと思います。
「レボリューション」は回虫のみ有効なのに対して、「ブロードライン」は回虫と条虫に有効です。
3、ダニに対する有効性の違い
こちらは一長一短あります。
「ブロードライン」はマダニに効きますが、耳ヒゼンダニや疥癬には効きません。
「レボリューション」はマダニには効きませんが、耳ヒゼンダニには効きますし、効能外使用ですが疥癬にも効果があることが知られています。
4、価格の違い
「ブロードライン」は新しく出てきた薬なので、お値段はやや高めになります。
ちなみに当院では、
「ブロードライン」
2.5kg以下 1600円+税
2.5kg-7.5kg 1800円+税
「レボリューション」
2.5kg以下 1400円+税
2.5kg-7.5kg 1500円+税
になります。
動物病院によって販売価格は変わってくるので、参考程度に見ておいてください。
以上、大きく4つの違いがあります。
さて、違いが多少あるのはわかったけれど、実際の診療でどう活用しているのか?という疑問が残ります。
あえて、価格の高い「ブロードライン」を使う目的。
「ブロードライン」に出来て、「レボリューション」で出来ないことは、2つです。
「瓜実条虫」の駆虫と「マダニ」の駆虫。
このうち、マダニはついていれば肉眼で見えるのでわかりますが、瓜実条虫は便検査をしても卵が見つかることはほとんどありません。
瓜実条虫が寄生しているのがわかるのは、便に米粒みたいな白い虫が出てくることくらいです。
そして、瓜実条虫はノミを食べることによって感染します。
なので、「ブロードライン」は瓜実条虫の駆虫、ノミの駆虫を兼ねる薬として、とても利用価値が高いのです。
以前は瓜実条虫が見つかった時は、ドロンシット錠+レボリューション、プロフェンダースポット+マイフリーガードなど、2つの薬で対応していました。
「ブロードライン」は単剤ではやや高めの薬ですが、2剤使うよりは割安なので、飼い主様にとってもメリットのある薬だと思います。
現在の使い方としては、仔猫を保護され、健康診断に来院された方で、耳垢の検査で耳ダニがいなければ、予防と駆虫を兼ねて「ブロードライン」を使います。
一回使えば、瓜実条虫は駆虫できるので、その後のノミ、フィラリア予防は「レボリューション」で続けていけば、瓜実条虫に感染することもないという形になります。
猫ちゃんの予防薬選びの一助となれば幸いです。
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