10月も後半になり、だんだんと肌寒くなってまいりました。

 

こういった季節の変わり目に多い病気のひとつに、猫の下部尿路疾患があります。

 

何度もトイレに行く、おしっこに血が混じる、おしっこが出ない、などの症状で来院される猫ちゃんが多いです。

 

その中でも、特に怖いのは、「おしっこが出ない」場合です。

 

特にオス猫は尿道が狭いため、結石などでつまりやすく、尿が全く出せない状態で放っておくと、1、2日で急性腎不全による食欲不振、嘔吐を引き起こし、最悪の場合、膀胱破裂や死につながるケースもあります。

 

現在は優れた療法食もあり、手術を回避できるケースも多いですが、それでも最終的に尿道を広げる手術が必要になることもあります。

 

今回紹介する猫ちゃんも手術が必要なケースでした。

 

約2歳のオス猫で、他院にて1ヶ月前から尿道閉塞の治療を受けていたが、処方食を使用しているにもかかわらず尿の出が悪いとのことで、来院されました。

 

陰茎部を確認すると、亀頭の先端が損傷しており、尿道の出口が半閉塞状態のため、尿が出づらいようでした。

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この状態だと薬では治せないので、飼い主様と相談の結果、手術を行うことになりました。

 

手術は、会陰(えいん)尿道造瘻(ろう)術という、おちんちんを切って尿道を広げる方法なのですが、細かく分けると3種類の方法があります。

 

①従来法という昔ながらの方法

②1982年に考案された、包皮粘膜をフラップとして使う方法

③2000年に考案された、包皮粘膜を筒状に使う変法

 

以前紹介したコは、①の従来法で行いました。

 

①の方法は、一番シンプルであり、3つの中では1番簡単なので、手術時間が短く済むというメリットはあるのですが、反面、術後に造った尿道口が癒着しやすい、感染を起こしやすいなどのデメリットがあります。

 

なので、そのデメリットを回避するために、②、③の術式が考案されました。

 

今回のコに関しては、年齢が2歳とまだ若いため、術後の長期予後の合併症を避ける目的で、③の術式で行いました。

 
手術は、最初に亀頭周囲を一周切開し、陰茎と包皮粘膜を分離しておきます。

 

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亀頭周囲を1周するように切開しているところ。

 

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陰茎と包皮粘膜を分離したところ。

 

包皮粘膜を温存したあとは、従来法と同じように、尿道球腺の部分まで、尿道を切開し、尿道を広げます。

 

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尿道球腺を確認しているところ。

 

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切開して広がった尿道にカテーテルを入れているところ。

 

 

温存していた包皮粘膜を反転し、尿道粘膜と包皮粘膜を5-0のPDSⅡで筒状に縫合していきます。

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包皮粘膜を反転しているところ。

 

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尿道粘膜と包皮粘膜を筒状に縫合したところ。

 

縫合後、漏れがないのを確認し、皮下織、皮膚を常法通り縫合し終了となります。

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外観は正常とほぼ変わらない状態になります。

 

この手術のデメリットは、従来法に比べ、難易度が上がるので手術時間が長くなるのと、縫合部の状態が観察できないことです。

 

なので縫合部の離開が怖いので、ちょっと期間長めに尿道カテーテルを留置しました。

 

若さのおかげもあって、術後順調に回復し、1週間後に無事退院となりました。

 

お疲れ様でした。

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