ヘルニアとは体腔内の臓器が本来あるべき部位から脱出した状態を示す。
そのなかでも腹壁に発生したものを腹壁ヘルニアという。
飼い主様の意識の向上のおかげか、一昔前と比べると交通事故で来院される猫ちゃんは少なくなりましたが、それでも全くないというわけではありません。
今回の猫ちゃんは、ちょっと不思議な経過なのですが、1年前に交通事故にあったとのことでした。
その時は、様子を見ていたら自然治癒したとのことだったのですが、最近どんどんお腹が膨らんできたとのことで来院されました。
X線検査を行うと、腸管が腹腔外に脱出していることが確認でき、腹壁ヘルニアと診断しました。
ただなぜ今になって腹壁ヘルニアになってしまったのか?
おそらく1年前の事故のときに小さいヘルニアになって、それが時間経過とともに徐々にヘルニアが大きくなってしまったのか、あるいは最近になって飼い主様が見ていないところで鈍的外傷があったのかだと思いますが、真相は不明です。
とりあえず放っておくわけにはいかないので、手術で整復することになりました。
仰臥位にして、ヘルニアの直上を切開します。
仰向けにし、毛刈りをしたところ。
皮膚を切開すると、ヘルニア嚢が確認できたので、それを切開し、内容物を確認しました。
内容物の腸管と腹腔内脂肪を腹腔内に戻し、邪魔なヘルニア嚢を可能な限り切除しました。
ヘルニア孔を確認し、両側の筋肉同士を2-0のナイロン糸で縫合しました。
尾側からナイロン糸をかけています。
半分ヘルニア孔を塞いだところ。
8割方塞いだところ。
すべて塞ぎ終えたところ。
その後、死腔を埋めるように皮下織を3-0のバイクリルで縫合しました。
最後に皮膚を常法通り縫合し、終了としました。
術後のX線写真では、腹腔内にちゃんと腸管が戻っているのが確認できました。
術後3日間ほど入院で様子を見ていたのですが、警戒心の強いコでご飯を全く食べなかったので、早めの退院としました。
おうちでは問題なくご飯を食べているとのことでした。
お疲れ様でした。
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