さて、最近は猫ちゃんの発情時期ということもあって、避妊・去勢手術の問い合わせが増えております。

 

そんな中、最近当院に避妊手術で連れて来られた飼い主様から、

 

「もし良ければうちのコもブログに載せてやってください。」

 

という大変有り難いお言葉を頂きましたので、今回は、猫ちゃんの避妊手術をご紹介させていただきたいと思います。

 

今回手術を受けていただいた猫ちゃんは生後6ヶ月半のメスです。

 

避妊手術を行う時期としては、各病院の考え方によって違いがあると思いますが、当院では、術前術後の絶食時の低血糖のリスク回避や、麻酔の代謝能力等を考えて、生後6ヶ月以降をお勧めしております。

 

また、今回の猫ちゃんは発情中とのことでした。

 

発情中の猫に避妊手術を行うかどうかも、病院によって意見が分かれるところですが、当院では行うことが多いです。

 

発情中に手術を行うことに対するデメリットは、

 

卵巣、子宮が通常より腫大しているので、手術の傷口が若干大きくなる。

卵巣、子宮への血管が発達しているため、思わぬ出血のリスクがある。

術後、まれにホルモンバランスの異常による乳腺の腫れが起こることがある。

 

などがあります。

 

なので、なるべく手術は通常時に行う方がいいのですが、

  • いつ発情するのか予測できない
  • 一度始まった発情は何度か繰り返すことが多く、終わるタイミングでうまく手術の予定を組むことが難しい

ため、現実問題として、発情中に手術を行うことが多いですね。

 

さて、手術の内容ですが、まずは傷口に毛が入らないように毛刈りを行います。

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次に消毒し、その後、腹部を常法通り切開し、子宮つり出し鉤(コウ)という器具を用いて、子宮を吊りだします。

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子宮を吊りだしたところ。

 

子宮を出したら、卵巣を引き出し、血管を吸収糸で結紮します。

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黄色い丸で囲んだ部分が卵巣。

 

左右両方の卵巣の血管を結紮、切断後、今度は子宮頸部を結紮し、切除します。

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その後、常法通り閉腹します。

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術創はこんな感じになります。

 

たまに、傷口の小ささを褒められることがありますが、正直なところ、あまり傷口の大きさは気にしておりません。

 

それよりも、避妊手術は安全にミスなく終わらせることの方が大切ですので、小さな術創にこだわって、無理に卵巣や子宮を引っ張って血管をちぎったりするリスクを負うくらいなら、躊躇なく術創を広げる方が安全に終わらせることができます。

 

安全運転の結果、今回はたまたまこれぐらいの術創になったというだけのことですので、術創の大きさと手術の上手い下手は関係ないかなと個人的に思います。

 

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取り出した卵巣と子宮になります。

発情中のため、子宮が通常よりも太いのと、卵巣が左右不対照に腫大しております。

 

術後は服を着せて傷口を舐めないようにします。

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以前は自分でタオルやストッキネットを使ってお手製の術後服を作っていましたが、最近は素材の良い市販品があるのでそちらを使っております。

 

そして、避妊手術の場合は一泊入院後、退院となります。

 

以上が手術の一連の流れになります。

 

避妊手術は病院によって様々なバリエーションがあるので、かかりつけの先生とはやり方が異なるかもしれませんが、何かの参考になれば幸いです。