つい先日、とある飼い主様が一枚のハガキを持って来院されました。

 

ハガキの差出人は以前通われていた動物病院からのもので、わんちゃんのワクチン接種のお知らせが書かれていました。

 

それ自体は何の変哲もないことのように思われましたが、その飼い主様のわんちゃんは、今年の2月に9種の混合ワクチンを接種したとのことでした。

 

いつも1年に1回ワクチン接種をされており、ハガキの来る時期が早すぎるという疑問がありました。

 

そしてさらに不思議なことに、そのハガキには「4種」のワクチン接種のお知らせと書かれておりました。

 

飼い主様は当惑されており、もし必要なら当院でワクチン接種をしたいということで、来院されたというわけです。

 

さて、このハガキに隠されたメッセージとは?

 

謎を解く鍵は2つあります。

 

1、前回のワクチンから半年くらいの間に送られてきたハガキ
2、前回「9種」のワクチンだったのに対し、今回は「4種」

 

結論を言うと、今回送られてきたハガキは、レプトスピラ病予防のワクチンのお知らせだったと考えられます。

 

謎を解くには、ワクチンの性質についてある程度知っておく必要があります。

 

一般的に9種混合ワクチンには、

①パルボ
②ジステンパー
③④アデノウイルス2型
⑤パラインフルエンザ
⑥コロナ
⑦⑧⑨レプトスピラ3種

が含まれています。

(アデノウイルス2型はアデノウイルス1型も予防できるため、2種と数えられている。)

 

そして、ワクチンには大きく「生ワクチン」と「不活化ワクチン」に分けられます。

 

一般的に「生ワクチン」は効果の持続時間が長く、「不活化ワクチン」は効果の持続時間が短いという性質があります。

 

9種のワクチンのうち、①から⑥までは生ワクチンで、⑦から⑨のレプトスピラは不活化ワクチンのため、レプトスピラのワクチンだけ、効力が1年以内に切れる可能性があります。

 

なので、2、3年くらい前から、レプトスピラだけが含まれたワクチンがメーカーから販売されるようになり、メーカーは半年ごとの接種を推奨しています。

 

レプトスピラのみのワクチンは現在「4種」か「5種」の2種類のみになります。

 

というわけで、ハガキの謎は全て解けた、犯人はこの中にいる。ということになりますね。

 

ちなみに当院では5種の方を置いています。

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ただ、現状では、当院ではレプトスピラだけのワクチンを打つことはほぼないです。

 

理由は、ここが岡山県だからです。

 

実は犬のレプトスピラ病は家畜伝染病予防法の届出伝染病に指定されており、農水省はこの届出を基に毎月発生数を発表しています。

 

ソースはこちら

http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/kansi_densen/kansi_densen.html

 

このデータによると、県別のレプトスピラ症の発生頭数は、

左から岡山県、広島県、鳥取県、兵庫県、香川県として

H27  4 0 2 0
H26  4 1 2 0
H25  2 0 5 2
H24  1 0 0 0
H23  0 0 1 0

ですので、近隣県と比較しても、感染のリスクは低いことがわかります。

 

ただ、可能性は低いと言っても、もし万が一感染して病態が悪化すると、黄疸、腎機能障害、出血傾向などの症状を示し、命に関わることもあるので、

 

「よく山や川辺、県外に旅行等で連れて行く」

 

というような、レプトスピラに汚染された環境にいく可能性のある方には、半年に一度の接種を勧めたほうがいいと思っているのですが、今の所その条件に当てはまる飼い主様がいらっしゃらないというのが現状です。

 

今回お越しになった飼い主様も、そういった飼われ方はしていないようでしたので、今回のレプトスピラのワクチン接種は見合わせることにしました。

 

このように、ワクチン接種に関しては、住んでいる地域や生活環境によって種類や接種間隔が異なる可能性がありますので、かかりつけの先生とよくご相談の上、接種していただけたらと思います。