2017年になり、早いものでもう20日が経ちました。
明けましておめでとうございます。
初めて当院のブログをご覧になられた方もいると思うので、自分の経歴をさらっと紹介すると、今年で獣医師10年目になります。
開業する前は、とある大きな動物病院で馬車馬のごとく働いていたので、大抵の症例は経験したという自負があります。
しかし、生命の神秘というものは奥深いもので、今回はそんな獣医師10年目の人間が初めて見た病気についてお話ししたいと思います。
症例は、ノラ猫を保護して飼われている飼い主様が連れてこられた猫ちゃんです。
年齢は約8歳、メスで、幼い頃から左目の外斜視があるとのことで、体重は2kgと小柄でした。
症状は食欲不振、尿に白いものが混じっているということでした。
尿検査では、尿中の白いものはほぼ好中球で、結晶などは認められませんでした。
最初膀胱炎かと思ったのですが、触診にて膀胱のあたりに卵のようなものが触れたので、超音波検査で確認してみることにしました。
すると、一部が卵のように腫大して、液体の貯留した、細長い管のような組織が確認できました。
以前かかられていた病院では、外斜視と体が小さいことから麻酔のリスクが高いとのことで、避妊手術をしていないということでした。
そのため子宮蓄膿症を一番に疑い、飼い主様と相談し、手術をすることになりました。
毛刈りをしたところ。
すでに腹壁がマスに押されて盛り上がっています。
定法通りに開腹すると、このような組織が確認できました。
明らかに子宮ではなさそうということで、全体を把握するために、周りの組織を確認しました。
左側の尿管の一部が腫大しており、子宮と膀胱が癒着しているのが確認できました。
まず、癒着を丁寧に剥がし、卵巣と子宮を摘出しました。
その後、腎臓と尿管を腫大している部分ごと摘出しました。
その後、腹腔内を生理食塩水で洗浄し、定法通り閉腹しました。
摘出した腎臓と尿管。
尿管の一部が重度に腫大しており、中身は大量の膿がたまっていました。
摘出した卵巣と子宮。
一部子宮に形成不全がありました。
正直なところ、なぜ尿管の一部にこれだけの膿が溜まってしまったのかはよくわかりません。
病理検査でも、腎盂腎炎、尿管炎という結果で、ガンや結石などのつまりは否定されました。
子宮の形成不全があったことから、もしかしたら尿管にも形成不全があり、一部狭窄した部分があり、そこに感染が起きて膿が溜まった?
という推論くらいしか思いつかないですね。。。
となると残った腎臓と尿管は大丈夫なのか?という心配もあり、念のため術後に尿路造影をして確認しましたが、右側の腎臓と尿管は正常に機能しているようでした。
血液検査でも、腎臓の数値も問題なく、3日間の入院中の排尿も問題なかったので、無事退院となりました。
今回の病気、病名を付けるとしたら「尿管蓄膿症」になるのでしょうか?
なぜこうなってしまったのか、私の灰色の脳細胞を持ってしても謎は深まるばかり(笑)
もしご存知のかたがいらっしゃいましたら、メールで教えてください。