暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
レジャーに行かれる方も多いと思いますが、わんちゃんねこちゃんは暑さに弱いので、熱中症対策は十分に行ってあげてくださいね。
さて、突然ですが、人生は選択の連続です。
あの時決断した選択が、場合によってはその後の人生を大きく変えてしまうかもしれません。
スマホはandroidにするのか? iOSにするのか?
おやつはきのこにするのか? たけのこにするのか?
大晦日は紅白歌合戦を見るのか? 笑ってはいけないシリーズを見るのか?
どれも大きな派閥争いがあり、慎重な決断が求められる案件ではありますが、自分にとってそれと同等レベルに悩ましい問題、それがタイトルに書いた選択になります。
会陰ヘルニアは、肛門周囲の筋肉が薄くなり、その筋肉の隙間から直腸が出てしまう病気です。
中高齢の未去勢の雄犬に多く、筋肉の隙間が大きくなると膀胱も反転して出るようになり、それによって自力でおしっこが出せなくなると、尿毒症により、命に関わる状態に急変する可能性もあります。
そのため、筋肉の隙間を塞ぐために手術を行うのですが、膀胱まで反転するような大きな穴の場合は、再発予防のために、開腹して、結腸や精管などを腹壁に固定する手術を追加で行うこともあります。
さて、問題はその2つの手術を同時に行う時に、どっちからアプローチするのが正解なのか?
下(腹部)から攻めるべきか? 横(会陰部)から攻めるべきか?
本を調べてみると、下(腹部)からアプローチするのが一般的なようですが、なぜそちらの方がいいのか、明確な理由が書かれているものは見つかりませんでした。
ちなみに自分は今のところ、横(会陰部)からアプローチしています。
理由は、メインの手術を先に終わらせたいというのと、下(腹部)からアプローチしたとき、膀胱が戻せなくて結局横(会陰部)からする羽目になったという話を聞いた事があるからです。
そんなわけで、今回手術させていただいたコのお話です。
10歳のミニチュアダックスのオスのコで、3ヶ月ほど前に左側の会陰ヘルニアになってしまい、その時は左側の会陰ヘルニアの手術と去勢手術を行いました。
しかし、残念ながら今回は反対側の右側も会陰ヘルニアになってしまい、膀胱も反転して自力排尿ができない状態になっていました。
まず陰茎から尿道カテーテルを通し、溜まっていた尿を排出した後に膀胱を戻しました。
そしてカテーテルを外した後、自力排尿ができるか経過をみましたが、すぐにまた膀胱が反転してしまったため、緊急で手術をすることになりました。
再発防止のため、今回は会陰ヘルニアの手術に加え、結腸固定と精管固定を行うことにしました。
前置きで話した通り、先に会陰部からアプローチします。
皮膚を切開して、ヘルニア孔から膀胱が出ているのを確認。
膀胱を腹腔内に戻し、ヘルニア孔を塞いでいきます。
内閉鎖筋を反転したところ。
ヘルニア孔の腹側はこの筋肉を使って塞ぎます。
ヘルニア孔を全て塞いだところ。
皮膚を縫合して、会陰部は終了となります。
続いて、体を仰向けにし、定法通り開腹しました。
膀胱を確認し、正常の位置へ整復しました。
続いて結腸を確認し、再脱出予防のため、左側の腹壁と縫合して固定しました。
最後に、膀胱の再脱出予防のため、前立腺から出ている精管を確認し、左右の腹壁に固定しました。
レントゲン写真で確認すると、
術前は膀胱が会陰部に反転していましたが、
術後は正常な位置に整復されているのが確認できました。
術後の経過も良好で、逆に元気すぎてよく吠えており、再発しないか心配するほどでした。
3日間の入院後、便の排泄を確認し、退院となりました。
お疲れ様でした。